台風トラブルで隣家と一触即発!? 〜大家力が試された日の出来事〜

関東で不動産業をしています。

某首都圏で所有している戸建てで、台風による大型トラブルがありました。

今回の件で瑕疵に関する民法を色々と調べたり、仲間の大家さんにも意見を聞くなどしてなかなかの知識が身についたので、忘れないうちに投稿したいと思います。

台風によるトラブルといっても今回は台風自体にやられた訳ではなく、隣の農家の大木が倒れて被害を受けました。

被害としては、所有する戸建ての柵と堀の一部が壊れたほか、給湯器も破損して交換が必要になりました。

入居者さんに当日の聞き込みをしたところ、

・午前1時頃、物凄い音、家に何かぶつかったような振動、電気も消える。外を見に行くと隣家の大木の一部が折れ、塀の柵、給湯器を直撃、給湯器が取り付けてある外壁から外れ、その衝撃で外壁の一部にひび・へこみができる

・警察・消防にも通報、倒木でふさがれていた道路の復旧作業、直撃した木枝・その他散乱していた木枝も隣家の敷地内に片付けられる。隣家の住人も片付けはしていたようだが、入居者もかなり木々の片付けに追われ疲弊した

・その後入居者が隣家に修繕について話をしに行くが、隣家が言うには、「うちでは費用は出せない、そちらの保険でやってくれ」と、誠意のある対応は見られなかった

・給湯器は現在、仮の板に設置をしているため本来の機能が利かず、自動でお風呂にお湯が張れない等、不便を強いられている

・消防、警察にもこのままの樹木の状態では、次に台風が来た時には、また被害が出かねないと言われており、入居者は非常に不安であるとともに、不便を強いられ困っている

とのこと。

隣家のご主人はなかなか手強い相手のようで、入居者さんはかなりご立腹です。

入居者さんと隣家の関係がこれ以上悪化すると退去につながるため、私が大家として隣家と話し合いをすることにしました。

方針としては以下の2つです。

①修繕費全額を、風災被害として保険会社に請求し、隣家に費用負担の請求はしない。
②台風被害とは言え、隣家からの倒木による被害のため、隣家に費用負担の請求をする。

民法717条第2項の規定によれば、②でもいけそうですが、経験値の高い大家さん方に相談したところ、「民法に規定された瑕疵は通常程度の風であっても倒れる危険性があるような場合に適用されるもので、台風などの自然災害の場合に生じたものについては、樹木として通常の安全性を欠いていたとは言えないのではないか?」となりました。

街路樹や緑地管理に詳しいメガ大家さんが言うには、

「民法の瑕疵では、生木が折れるほどの風災なら免責。仮に折れたところが枯れていた(特に枯れ松)などを放置していたとかなら賠償対象になるけどね。樹木の繁茂は従前から指摘をしていてもなかなか通りにくいよ」

とのことでした。

私も諸々確認してみましたが、民法的にはメガ大家さん達が言う通り「今回の台風での倒木に関して隣家に責任は問えない。隣家は倒木による破損の費用負担に応じる義務はない」となりそうです。

しかしながら普通の感覚でいけば、「お宅が長年放置していた樹木が倒れたんですよ?ご近所からも樹木危ないって言われていましたよね?ずっとうちに越境して困っていた上に倒れて被害でたんですけど、どうしてくれるんですか?」って詰めたくなる案件です。

何も言わずにこちらの保険で対処するのも納得いかないので、隣家のご主人を訪問することにしました。

しかしこういった時、好き勝手に気持ちをぶつけると相手も負けじと対抗してきて、まとまるものをまとまりません。

湧き上がる殺意は一旦おいて、筋道立てて話あうつもりで向かいました。

鬱蒼とした林の中に建つ隣家の平屋は、近づくとかなりのゴミ屋敷。娘さんや奥さんがこちらを警戒しながら見守る中、ご主人は戦闘態勢で登場しました。

しかし、ここでこっちも臨戦態勢に入ってしまったらいけません。

まずご主人に対して静かなトーンで、「今回の台風は大変でしたね、そちらに被害はありませんでしたか?」というご挨拶から話しに入ります。

そこから間合いをはかりながら、「今回、当方所有の物件に残念ながら見ての通りの被害が出ました。自然災害だからお互い様で「全額弁償してくれ」というつもりはないし、修繕費用は当方から保険請求しますが、保険で100%修繕費用がカバーできるかわからないし、修繕費用も現時点では見積もりも出ていない状況です。保険でカバーできれば、一番良いのですが、万が一、100%修繕費用がカバーできず費用負担が出る場合には、「当方も負担しますので、負担割合を相談させてもらえませんか?」と話したところ、「相談には応じてくれる」とのことでした(無論、相手に所有者責任は問えないし、費用負担の義務はないという話しはこちらからはしません)。

話の最後にはご主人から、「今回はご迷惑をおかけしました」というお詫びの言葉も出てきて、ご主人は自分の責任で色々な迷惑がかかっていると自覚してくれたようです。

「北風と太陽」作戦、成功です。笑

結局のところ、私の入っていた保険で十分にカバーできたため、隣家に費用負担をしてもらわずに済みましたが、この件がきっかけでうちを気遣ってくれるようになったため結果オーライです。

保険も十分、いや十二分におりましたしね!

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