「この中古物件を、リユースするには、リノベーションがおすすめですが、費用をリデュースしたいのであれば、リフォームでも可能です。」
まさか、こんな横文字だらけの販促文が実際にあるとは思わないが、これに近いものは時々ある。
業界の人は、いつもの言葉や文章に飽きて、新しいキャッチコピー考える時に、上のような「言語明瞭、意味不明」の文章になることが多いな。
そんな分かりづらい言葉の中から、不動産業界で多用されているリフォーム(Reform)とリノベーション(Renovation)について話そうと思う。
ちなみに、リユースは再利用、リデュースは削減の意味で、特に建築と関係のある言葉やない。
一般的にリフォームには、修復や原状復帰のイメージがある。
ところが、その範囲は広く、クロスの貼り替えから増改築などもリフォームと呼んでる。
また、骨組みにまで裸にして行うものをスケルトンリフォームと言う場合もある。スケルトン(skeleton)とは、骨格や骨組みのことやね。
他方のリノベーションには、大幅な間取り変更や模様替えのメージがあり、先のスケルトンリフォームのイメージが強い。
こうなると、使い分けが難しくなってくる。
ちなみに、ジーニアス英和辞典では、Reform=改善・改良・改革とあり、Renovation=修理・復元とある。
なんや日本で使われている意味合いとは真逆の感じやな。
おまけに、リノベーションの和訳の中には、リフォームの文字まである。ほんま、訳がわからんわ。
そしたら、建築基準法上での定義ではどないなってるんやろか。当たり前やけど、法文にリフォームやリノベーションなどの横文字はない。が、それに該当するだろう言葉としては、大規模な修繕と大規模な模様替えという文字があり、次のようになっとる。
・大規模の修繕
建築物の主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根または階段)の一種以上について行う過半(1/2超)の修繕。
・大規模の模様替
建築物の主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根または階段)の一種以上について行う過半(1/2超)の模様替。
主要構造部について補足しておくと、あくまでも強さや耐力で重要な部分であって、非構造部分の間仕切りや間柱、意匠的な螺旋階段や屋外階段などは含まれない。
なお、合わせて国交省の参考文献から、修繕と模様替の説明文も紹介しておく。
・修繕
修繕とは、経年劣化した建築物の部分を、既存のものと概ね同じ位置に概ね同じ材料、形状、寸法のものを用いて原状回復を図ることをいう。
・模様替
模様替えとは、建築物の構造・規模・機能の同一性を損なわない範囲で改造すること をいう。
また、一般的に改修工事などで原状回復を目的とせず、性能の向上を図ることをいう。
これらをみると、リフォームが修繕で、リノベーションが模様替えとする見方が、現状のイメージに近い。
なお、ネット上の解説には、法文の過半を1/2以上としているものがある。
しかし、正確には1/2を超えていなければ過半とはいえず間違いや。・・・どうでもええけど。
とにかく、英語の和訳との整合性に違和感はあるけど、現実の運用としては、基準法と国交書の参考文献が元になっているようやな。もう既成事実になっとるからしゃーない。
その上で、ある大手不動産業者の、販促フレーズをみてみよう。
「部分的なリフォームから、間取りや構造を一新するリノベーションまで、ユーズに合わせて最適な方法でリフォームします。」と言うのがある。
前半部分で、小さな工事はリフォームとして、大幅な工事はリノベーションと位置づけてるが、最後に、それらを含めてリフォームとしとる。
上で述べたそれぞれの定義に合致しているが、表現に苦しんだ跡がみえる。
上の図は、リフォームとリノベーションの工事範囲とコストの関係を表したものやが、どのような工事内容・範囲でもリフォームに含まれていることに注意して欲しい。
まあ、普段の会話で、どんな使い分けも勝手やが、誤解を招かんようにせなあかんな。
なお、余談として、リフォームやリノベーションについての建築確認申請について簡単に紹介しておく。
建築基準法では、既存建物の主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根又は階段)の一種以上の部分について大規模(過半)な修繕や模様替えを行う場合に建築確認が必要とある。
しかし、リフォームやリノベーションを大々的に行う場合でも、主要構造部の半分超の修繕や模様替えを行うことは、まずない。
多くは、外壁塗装や防水のやり替え、あるいは非構造部分の撤去などでの間取り変更で、主要構造部に該当しない工事が多い。
例えば、マンションの大規模修繕などがこれに当たり、建築確認申請はいらない。
さらに、一般的な木造住宅の場合には、主要構造部や範囲に関わらず、リフォームやリノベーションに際しての確認申請は不要や。
ただし、規模が木造二階建て、延床面積500㎡以下、最高高さ13m以下、軒高9m以下の場合に限る。
つまり、一般的な中古物件で行うリフォームやリノベーションには、建物の構造種別を問わず、建築確認申請が不要ということやね。
通常の業務でリフォームやリノベーションの定義を気にすることはないと思うが、
ふと疑問に思った時に、この記事を思い出してくれたら、嬉しいな〜。