「安くしたいから総2階がええよ!」子連れの若い夫婦がそんな話をしとる。確かに、総2階建てにはコストを下げられる要素がいくつかあるのは事実やな。
そやから、そのことに異論はないけど安く建てることが目的ではないやろ。「建ててよかった〜」って思えることが大事やで。
ながいこと業界で働いていた元設計マンの、今だから話せる本音を聞いてやってくれ。
総2階建てと言うのは、早い話がサイコロを重ねた形やな。
つまり、1階と2階の工事面積がほとんど同じになる訳だ。なお、コストを抑えるために総2階建てを選ぶのだから、延べ工事面積も30〜40坪が一般的に多い。
延べ工事面積には、建築基準法上の延床面積(屋内部分)だけでなく、ポーチやバルコニーなどの屋外、そして屋内でも床のない吹き抜けなどの実際に工事を行う部分の面積も含められとる。メーカーによっては施工面積と言う場合もある。
仮に、延べ工事面積を35坪とすれば、1・2階それぞれが17.5坪の広さで、タタミでいえば35帖の広さになる。これなら素人でも分かりやすいよな。
そこで、1階に必要な部屋と広さを書き出してみた。みんなは、自分の住環境を思い浮かべてくれればええ。
- ポーチ:1帖
- 玄関:2帖
- ホール・通路:4帖
- トイレ:1帖
- 洗面(脱衣):2帖
- 浴室:2帖
- 階段:2帖
- キッチン:4帖
- 収納、物入れ:2帖
以上は、ほとんどミニマムの広さだが、それでも合計すると20帖になる。残り15帖が、リビング・ダイニング(L・D)に振り分けられる広さになるということやな。
十分ではないが、標準家族(夫婦+子二人)であれば、なんとかくつろげる広さやろう。
しかし、流行りのシューズクロークやパントリー、さらに和室コーナーなどの我儘を言えば、L・Dはみるみる狭くなり、10帖ほどになってまう。若いぼんくら設計マンは施主の言うことに忠実やからね。
では、2階はどやろ。
- 寝室+クローゼット:8帖+2帖
- 子供室+クローゼット:6帖+1帖
- トイレ:1帖
- 階段:2帖
- 通路:2帖
子供室を2部屋とすると、計29帖でまだ6帖分が残ってる。この余ったスペースを、吹き抜けやバルコニーなどで消化して総2階としているのが実態や。
何が言いたいかと言うと、総2階建てはコストを抑える効果はそれなりにあるが、使い勝手やバランスの悪いスペース配分になりやすいっちゅうことや
上の参考プランでは、もっともそうに12.6帖のL・Dに食卓とソファーが配置されとる。しかしだ、ほとんどのスペースが家具に占められてるやん。この広さでは食後に家族4人がくつろいで団らんなどは無理。まして、「ホームパーティーしたい!」なんて、無理!絶対に無理!!
もちろん、中には良く考えられた総2階建てもあるけど、限られた面積の中で、必要な部屋や広さを確保するには総2階建てでは限界があるな
解決策としては、1階には和室を設けない、浴室を2階にするなどでできる限り、ダイニング・リビングを広くすることやね。その上で、納得できる間取りや広さにならない場合は、総2階にこだわる必要はない。
総2階から一部がはみ出ても、そのコストアップ以上の満足感があるはず。安く建てられると喜んでいても、住みだして「え〜、狭い!」では泣くに泣けへんで。
総2階建ては規格型住宅に多く、そのままの形で売れればメーカーにとって利幅は少ないものの、効率のよい販売システムや。しかし、肝心のユーザーにとっては、効率の悪い間取りになりやすいと言うことを、元設計マンから忠告しておくから注意しいや