激安購入した物件の、残置物の話です。
廃棄を安く済ませたいので、自分でゴミを分別して、役所の処理場に運ぶ準備をしていました。
この部屋の入居者は、ちょうど自分がゴミ分別をしている窓際の辺りで、うつ伏せになって死んでいたらしいです。
事件性のない病死だったため、「告知義務は必要ないかなあ」などと、ぼんやり考えながら作業を続けます。安い物件ばかり仕入れている自分にとって、こういった話は慣れたものです。
孤独死だったらしく、お通夜もお葬式もなかったと聞きました。身寄りはいるようですが、残置物を整理した痕跡はありません。
作業をしていると夕方になり、薄暗くなってきました。
慣れてると言えども、人が死んだばかりの家で、暗い中作業をするのは気持ちの良いものではありません。
今日はそろそろ終わりにしようか、と思って手を止めた時、ふと、アルバムの束を発見しました。

これが失敗でした。
たくさんの家族写真がありました。
小さな子どもの誕生日なのか、親戚が集まってお祝いする賑やかな写真がありました。もらった人形やオモチャを嬉しそうに抱える子ども、笑顔の若い両親と、元気なおじさんやおばさん達、その後何年も賑やかな家族写真は続きました。
写真の中の子どもや孫は次第に大きくなって、次々に巣立っていったようでした。写真の枚数も、写っている人の数も、活気ある雰囲気も、徐々に少なくなっていき、アルバムは唐突に終わりました。
残置物の中には、アルバムの写真で見たような人形が転がっていました。
アルバムに笑顔で写っていたあの家族たちは、老人ひとりを残して一体どこに消えてしまったのでしょうか・・・。
激安物件には、住んでいた人の生々しい歴史が、そのまま残っていることが多々あります。
安さと引き替えに、むき出しのリアルさを受け止める覚悟が必要なのです。