少し前に所有物件の1つが火事で全焼しました。夕方から夜にかけてのことです。
たまたま風の強い日で、火は隣接する建物に燃え移り1つは全焼、いくつかは部分的に延焼しました。近所の人や野次馬も集まり、大変な惨事となってしまったのです。
ただ、死人やケガ人が出ることなく、入居者達は無事に避難することが出来たのが、不幸中の幸いです。
火事の原因は、入居者のひとりが、アマダイを焼いたまま忘れて外出した事でした。
ちなみにこの入居者、ちょくちょく家賃を滞納します。「家賃滞納するくせに、アマダイ食うなよ?」と思ってしまった私は、大家として心が狭いのでしょうか?
すみません、話を本題に戻します。
火事で建物が燃えたため、私を含めた建物オーナーたちに、少なくない火災保険がおりました。建物の一部が燃えたオーナーには、火事の後あれこれ文句を言われましたが、支払われる保険額をみて態度がコロっと変わりました。
「焼け太りって単語を初めて知りましたよ!」と、遠回しにお礼まで言われる始末です。
「火事がおこると、大家の財布は分厚くなる」そんなことわざがあるかは知りませんが、大家業界では秘められた1つの真実だと思います。
ただ、入居者たちは無事でしたが、住む家はなくなってしまいました。
管理会社から聞いた話では、「年寄り夫婦は次の住居がなかなか決まらず、住み慣れた街を離れなければならないだろう」とか、「元入居者が建物跡の空き地に行き、妻の仏壇の燃え跡を眺めたり、遺品を探すため穴を掘ったりしている」など、あまりにもディープな現実がそこにはありました。
火事が起こったのは、私のせいではありません。
あのアマダイ野郎の不注意です。
でも、それによって大家の私の懐が潤ったのは事実です。
同時に、入居者の現実を聞いて、私がもの哀しい気持ちになったのも事実です。
「哀れに感じ同情もする、しかし同時に、儲かってもいる」
これは、なかなか複雑で処理の難しい感情だなと、改めて思った火事での出来事でした。