2018年、銀行がらみの不動産事件が業界を大きく騒がせた。事件は、不当に高い収益物件を個人投資家に売りつけたサブリース業者と、ろくに審査もせず不当に貸し付けた銀行が起こしたものやった。
その中心にいたサブリース業者のスマートデイズは、2018年5月に破産し、残っていた不動産も2020年8月に、ようやく売却できたようや。そして、共謀していたスルガ銀行も2018年10月に金融庁から行政処分を受けとる。
これを教訓とするため、どんなことが行われていたのか、振り返って事件の全体像を見直してみようと思う。知ればしるほど、びっくりするようなことばかりや。
上の図は、収益物件のシェアハウス(かぼちゃの馬車)を介して、オーナーとサブリース(転貸借)業者、そして銀行との関係を表したものやが、関係そのものは一般的なもので、特に問題はない。
順に説明していくと、
- スマートデイズ(SD)が、シェアハウスのオーナーになってくれそうな個人の不動産投資家を募集などで探すことから始まる。
当然、儲かることを強調するのは世の常やから、仕方ない。口車に乗る方も悪い。
- うまく話が進んだら、SDが融資手続きを代行して銀行に書類を持ち込む。
記事によると、この時にSDは融資許可が出るように、書類の書き換えをやっていたらしいが、事件の調査が進む内に、銀行と共謀していたことも分かった。
本来なら融資できない返済能力のない人にも、無理やり貸し付けてた訳や。
- 銀行とも共謀している訳やから、当然融資許可は下りる。
- 融資が決まったら、SDは建設会社にかぼちゃの馬車を建てさせる訳やが、ここでもえげつないことをやっとる。
SDは発注する代わりに、50%ものキックバックを要求していたそうや。
古い体質と言われる建築・不動産業界も、キックバックはなくなりつつある。あっても、普通は数%や。それが50%とは、呆れるのを通り越して笑うしかないわ。
そんな高額のキックバックは建設会社も払えんから、請負金額を水増しせなあかん。
- 50%の水増しで高くなった収益?物件を、SDは①で見つけた個人投資家に売りつける。記事によると、土地を含めて1億数千万にもなっとる。
50%も高い物件を買わされ、余計に銀行から金を借りなあかん投資家は、たまったもんやない。けど、当初から金額は提示されていたやろうから、素人の個人投資家は疑うことをせん。
この時、” 知らぬが仏 ” って、SDや銀行は笑ってたんやろな。
- かぼちゃの馬車が完成して、一括借り上げと家賃保証・管理委託の契約を結ぶ。
もし、かぼちゃの馬車の入居率が順調やったら、” 知らぬが仏 ”で終わってかもしれん。
ところが、SDの思惑通りの入居率にならなくて、かぼちゃの馬車オーナーへの家賃保証が払えなくなり、倒産と云うことになった。
実際には、他にも急激な拡大路線なども影響したんやろうけど、詐欺や泥棒まがいの商売をするくらいやから、経営もいい加減やったろうと思う。
オーナーもサブリース料が入らなくなって、銀行への返済ができずに破産した人もいるようや。自分の甘い判断から出たとは言え、破産は辛い。
この事件に出てくる4人の登場者(SD、投資家、銀行、建設会社)のうち、誰か一人でもまともな人がいたら、事件は起こらんかったと思う。
まず、一番悪いのはSD、当たり前やな。次が銀行で、不正を見て見ぬふりどころか、共謀して不正融資しているところなんかは、もしかしたら影のボスかも知れん。
そして、3番めが建設会社や。いくらキックバックが合法や云うても50%はないやろ。なんで断らんかったんや。おそらく、建設会社も味をしめたんやろな。
オーナーになった個人投資家が一番の被害者かも知れんが、10%の頭金もないのに1億を超える融資が受けられると思ってる身の程知らずにも一端の責任はある。
最終的には、スルガ銀行が担保にとったオーナーのかぼちゃの馬車を投資ファンドに売却し、融資額に不足する分は銀行が負担することで、解決したとのことや。当たり前じゃ!
女性専用のシェアハウスで、” かぼちゃの馬車 ” なんて若い女性が好みそうな名前をつけた事業は、化け損ねて、童話のようなハッピーエンドにはならんかった。
それでも、プラマイゼロの「骨折り損のくたびれ儲け」に終わっただけでもましかも知れ へんな。
将来の安定した収入を得るための収益物件は有望株やと思う。それに、その知識を得るために、研修会や相談会などに参加するのも人生設計の上で役に立つと思う。
そやけど、それらの会場で声を掛けてきたり、名簿を頼りに連絡してきた人がいたとしても、まずは無視する方がええ。口車に乗ったらあかん。
自分で学んだことを元に、納得のいく物件を自分で選ぶくらいのことが出来けんかったら、投資家とは云えんやろ。自分の将来設計を人任せでは失敗するだけやと思う。